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2010年02月03日(水)

長い長い映画館とパニックと橋口亮輔監督作品オールナイト:1/31池袋新文芸坐とわたくしのお話 [観る]

ここ最近、ロクに映画館に行けなかった。
発端は2008年の11月。『ダークナイト』を見るべく近所のシネコンに行った日のこと。上映期間も終了間際で、狭い映写室、天井は低く急な傾斜で座席が並んでいる。そこはかとなく圧迫感をおぼえつつ、スクリーンの正面に座る。館内が暗くなり、予告編が始まったあたりから、「ヘンな感じ」がした。
頭がくらくらする。寝不足のせいかな、と自分を納得させていると本編開始。冒頭、ぐーっと寄っていくカメラ。うっ、気持ち悪い。そして銀行のシーン。妙な恐怖感が沸々とわいてくる。「…そういうシーンだし」とも思うが、恐怖感が増すのをコントロールできない。動悸は激しくなり、胸がムカつく。激しく気持ち悪い。大きな音がなる度、心臓が震えるような気がする。吐く(かもしれない)。怖い!! でも途中で出たら他の人に悪いし出られない。…えっ?「出られない」…? グワーッと焦燥感と恐怖感が増す。体の周りに、見えない煙のように。

ここで必死で導き出した結論:「映画どころではない」。連れに緊急事態を告げて、途中退出した。ロビーで深呼吸を繰りかえすも、動悸はなかなか治まらず、なんじゃこりゃ?と意味がわからなかった。でも、なんとなく「体調が悪かった」「シネコンが狭かった」等と結論づけて、その異常を無視した。

それから数ヶ月後、アカデミー賞がらみで再上映された『ダークナイト』を、有楽町の大きな映画館の「後方、かつ通路側でいつでも出られる席」にて再チャレンジしてみた。 …やはりぞわぞわした恐怖感は訪れたものの、耳を塞ぐ・目が回ったら目を閉じるという対策で最後まで観ることは出来た。それで観られたと言えるかどうかは別として、その時の自分は最後までいられことに満足し、映画も楽しめたと思っていた。
 しかし、その後『スラムドッグミリオネア』で撃沈。上映館は大迫力の音響が自慢で耳を塞いでも効果無し。グワーッと覆われるような恐怖感にまた襲われ、必死で耐えて耐えて退出はしなかったものの、その後24時間動悸と吐き気は続いた。そもそもこんなに具合悪くなってまで観る映画じゃなかった、と半ば八つ当たりで恨みがましく後悔した。

以来、観たい映画が浮かぶ度に「あんな思いをしてまで観るべき作品か?」と躊躇するはめになり、やがては「映画館なんて行かなくてもいいんじゃないか、DVDで観れば」と思い至った。最近の映画館はどこも音響が売りだし、映像だって凝ってるのが多いし、どんなに面白くても、私が観られる映画は少ない。あったとしても、なるべく小さい画面で、小さい音でないと――。
けれど、人間うまいこと出来ていて、時が経つとそんな自分に逆らいたくもなる。とりあえず病院に行った。診察結果:パニック障害。ただし映画館でしか発作は出ていないので、基本は様子見。薬は頓服のみ。映画館に行っていないので発作は起きず、無理矢理発作を起こすこともないし、ということでひと月程で受診は終わった。

はて、私は映画を観られるのか観られないのか。結局は自分の体に聞いてみるしかない。そうして昨年末、コワゴワ行ったのが新文芸坐。オールナイトで何度か来ていたし、自分の中の映画館は、シネコンじゃなく大きなロードショー館でもなく、名画座かなあと思って。観たのは『鴛鴦歌合戦』『君も出世ができる』の二本立て。
…結果、余裕でクリア。なんだ、シネコンがダメでも名画座に行けばいいんだ!早稲田松竹と新文芸坐と下高井戸シネマの3つ行けたら結構映画観られる! …そんな冗談をかましていた折に「橋口亮輔オールナイト」情報を知り得て、これはもう、何の迷いもなくチケットを手に入れた。『渚のシンドバッド』が観たかった。

昔好きだった映画を観るのは少し怖い。初恋の人に会ってがっかり…みたいな事も有りうるから。『渚のシンドバッド』を観たのはおそらく10年以上前で、その時もどっかの名画座で観て、何に感動したって浜崎あゆみ演じる相原さんの全ての動作に感動して、「なんだこの子!?」と帰宅後やおらみかん畑に寝ころぶ相原さんの絵まで描いてしまうほど心酔した。もちろん、伊藤くんの強さ、吉田くんの弱さと優しさ足して割った的風情も絶妙なのだけど、とにかく、浜崎あゆみという可愛い女の子に驚かされた。まさかあゆになるとは!でも、なるか。彼女は輝きまくっていた。

で、その映画を三十路の今観るとどうだったか。全員が本当にきらきらしているのを感じて、眩しくて、いちいち胸が苦しくなった。特に清水さんの秀才ゆえなのか、不憫な性分が愛おしい。カンバラ君は素晴らしい人で羨ましい。松尾さん、ああいう子が一番モテるんだよな。(友人役の安西紘子→現・安西ひろこに驚愕。前は気付かず。感慨深かった)ほかにも、村井国夫演じる父親とのシーンの、親子間の微妙な空気とか、今と違うそのころの長崎の風景とか(稲佐山!稲佐山!)、やっぱり浜崎あゆみは良いなあとか、全部が大切に思えてしまった。私が一番好きな映画は『ゴーストワールド』という10代のダメな女の子映画なんだけれど、同じくらいこの映画が好きだ。

『二十歳の微熱』初見。ある時期のある自分の気分とシンクロするところがあって、一瞬退出した。ごめんなさい。樹の方向音痴じゃないけど地図がない感じ、大人になった今では懐かしい感覚で思い出す。樹とともにふわふわしている高校生、信一郎の頭を撫でたい。そして、携帯用ブラシとかムースとかに反応してしまう三十代。

『ハッシュ!』初見。まるで登場人物と一緒に生きているような気持ちになって、数々の感情が生まれては消え生まれては消え。高橋和也が演じた直也、素敵だった。愛の人。後半の朝子さんのセリフに泣かされる。勝裕は、おずおずと幸福を受け容れる雰囲気が、なんだか微笑ましい人。
あと、秋野暢子の背中が忘れられない。

監督によるトークショー(このお話も聞けて良かった)があり、三作品の上映がはじまって、おわって、朝になって、明るくなる空を観て「また映画が映画館で観られて良かった」という気持ちでいっぱいになった。同時に、ぐじぐじ沈殿していたある感情がすっぱりと消えて無くなって、とても爽快な心地だった。よかったよかった。

私は橋口監督の映画やその登場人物がとても好きだと思う。私が観られる映画、ありました。『ぐるりのこと』も観なくては。


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西イズミ

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インドアな本好き。猫の飼い主、豆本作家、雑貨作家、イラストレーター。
現在3冊の既刊があります。その他、猫関係のお仕事をときどき雑誌やテレビでしております。
☆「猫がよろこぶ手作りグッズ」(WAVE出版)
☆「猫との暮らしを楽しむヒント228」(河出書房新社)
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